歯の神経が病気のために歯と骨を失うのは、とてももったいないと思います。
歯の神経だけ無くなれば、歯も骨も健康で永く噛めます。
歯の神経を取るのは技術的に難しいのですが、治療は歯科医によって様々です。
歯科医になりたてでは、とても治せなかった歯でも、経験と実績を積むとすっかり治せる確率が非常に高くなります。
毎日十数人の患者様に根管治療をさせて頂いて、殆どの歯は治って治療が終わります。
症状が残る歯は月に1、2本、抜歯は年に数本です。
治療前の症状が強烈だったり、特殊な治療を受けていても、神経さえ取れればとても良く治ります。
抜歯してインプラントで治すケースと比べると、根管治療はインプラントが骨にくっついた状態と似ています。
神経さえ取れれば短期間で噛める様になります。
歯の神経が病気になった時に、病気の神経だけを取り除く治療です。
歯や骨の健康を取り戻し、サステナブル(噛む機能を維持する)な歯科医療には大変重要な治療です。
病気の部分が無くなると、強烈な痛みも大きな腫れも、原因が無くなることでとても良く治ります。
痛かった歯が永く噛み合わせを支えてくれる歯になります。
ただ、治療は見えない歯根の中を削るので、治療によって結果(神経の取れ具合)は様々です。
完全に普通の歯として治ったり、痛くて抜かれたりは、治療の違いによります。治らない歯もありますがその確率は低いです。それは以前に治療したり、途中で痛くて治らなかった歯が、別の歯科医が治せることが少なくないことが実証しています。
根管治療は歯科医の考え方(器具・治療法)が変われば削れ方が異なるので、誰にも治せない歯はかなり少ないのが現実です。
歯科医は臨床を積み重ねることにより、治療の結果を改善させています。経験や考え方、治療法も異なれば同じ結果になるのは不合理です。
根管治療で抜かずに治すのは、とても重要です。
高齢になる程その恩恵の大きく、よりその重要性は増すと考えられます。
根管治療で最も効果が高いのは、神経取り除く、根管拡大の過程です。
痛みのもとである、病気の神経を神経がなくすことを治療の王道と考えています。
実際に神経が減る段階で症状は改善し始め、丹念に探って除去すると、削っている最中に違和感すら無くなることも日常的なことです。
根管拡大はやすり(ファイル)で削るのですが、曲げられる硬さで、歯より柔らかい神経(歯髄)を目指して削ります。
見えない歯根の管の中から歯髄を識別して削るには、その手指感覚が欠かせません。
その感覚で歯髄を追求することで、根の先(根尖)まで器具が到達し、歯髄に近い形に削ることができます。
病気の神経は蛋白質で出来ていて、健康な神経に戻ることは、ほぼありません。
その様な強烈な症状を起こす歯髄を残して治るのでしょうか?
慢性化することはあるかも知れませんが、不確実です。
根管治療は、歯の神経がどの程度取り除けたかが治療結果を決めると言って、過言ではありません。
治らないのは、症状が改善する程、神経が取れていない状態です。
"更に神経を除去すれば治る"というのが正確な表現といえます。
消毒や薬剤では、治ることのない痛んだ歯の神経に、決定的な効果は期待出来ません。
痛みや腫れは、神経を除去される最中にとれていきます。(神経が取れなければほぼ改善しません)
高度に取り除くと、痛みどころか違和感すら消えることも珍しくありません。
神経が無くなることが最善の治療と言えます。
日本の歯科治療は技術に対する評価はとても低いのが現実です。
歯内療法では、最低賃金以下の診療行為は少なくありません。
苦労して抜かずに治しても、根管治療に対する診療報酬は抜いた場合と変わりません。
歯を治せないで抜けば、両隣りの歯を含めた3本の治療となり、3倍の診療報酬になります。
もちろん自費でインプラントとなれば、数十倍の報酬となります。
そのような評価では、抜かない根管治療に注力することを、社会は求めていないことになります。
患者様と社会に大きな恩恵をもたらす歯内療法(根管治療)は、正しく評価されない限り、抜歯の前段階の処置に過ぎません。
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